【LIVE REPORT】 『2024 ADDICT OF THE TRIP MINDS LIVE -WINTER-』心斎橋 club JOULE/新栄 SHANGRILA◆2024.12.13/14

2024 ADDICT OF THE TRIP MINDS LIVE -WINTER-
2024.12.13 fri./14 sat.
心斎橋 club JOULE/新栄 SHANGRILA
Text.K子。

12月13日~15日にかけて行われた『2024 ADDICT OF THE TRIP MINDS LIVE -WINTER-』では、これまで開催されてきた東京・大阪に加え、ついにADDICTが名古屋に上陸!さらに、三日間連続ということもあり、初の“TOUR”感満載となったライヴの様子をレポートします!まずはバンド側の遠征となる大阪・名古屋から。セットリストはラストの曲を除いて同じ14曲ということで、大阪は前半をメインに、名古屋は後半をメインにお届けします!

◆12月13日【大阪・心斎橋club JOULE】

三度目となるこの会場、そういえば昨年2023年ライヴ収めとなったのはここだった。ファンの人たちもすっかり慣れた様子で、後方のソファ席には開場とともにゆったりお酒を飲みながら開演を待つ姿も。ライヴは全員立って盛り上がりながら参加するもの、そういった概念を取り外して自由に楽しめばいいんだ、というADDICTのスタイルを定着させたのもこのJOULEだったのではないだろうか。

16:10、ステージ頭上から大きな☆型のADDICT eyeに見つめられる中、SEが流れ始めやがてMotomさん、志門さん、シゲさんが定位置にスタンバイすると、バックライトに照らされて3人のセッションが始まった。それぞれの音が共鳴し合い、志門さんの指先から放たれる音色が空間に妖しく漂う。

やがて闇の底からスモークのように流れ込むシゲさんのベース…「孤独に自由に」だ。健一さんが登場、手にはクロコダイルの模様が目を引くNewギターを携えている。いつもとは趣の違う煌びやかな衣装に身を包み、オレンジ色の明かりに染まりながら悩まし気に両手で表現を繰り返す。その隣で歌詞を口ずさむ志門さんに、この日を待っていたのはチケットを握り締める側だけでなく、演奏する側だってきっと同じなのだろう、そんなことを思ってみたりした。
続けて、健一さんのソリッドなギターとともにMotomさんのカウントで始まったのは「心の中の銃(New ver.)」。自然と体が揺れてしまうような、刻むドラムのリズムが命とも言えるアレンジである。そして曲間の無音の状態で、健一さんが何かに導くようにジャンプジャンプ!「旋律」のギターが響き渡り、一気に明るくなったステージで再びジャンプジャンプジャンプ!このまるで階段を二段飛ばしで駆け上がるような沸き上がる高揚感も、ギターと《トゥル ルル…》という声だけになった後の激しく畳みかける静から動への緩急も、すべてがたまらない。そこに、曲終わりで間髪入れずに力強くキレ込んだのは「幸せな日々」のあの耳に残るドラムのリフ。客席に拳が咲き乱れ、健一さんはステージ上を感情のままに動き回り、志門さんは前に出て熱く奏でる。《貴方だけに…》とかざす手に延ばす手のひら、赤いライトが熱をさらに上昇させたところで最初のMCへ。

水を飲みながら「暑くないですか?クーラーの温度は何度ですか?」何かがやっぱりおもしろい(笑)。そしてもうちょっと休みたいんだけど…と、実にさらっと口にしたのは「Aの音で」という言葉。客席が何のこと?と一瞬思っている間に、キラキラとした妖艶な音色を紡ぎ出す志門さん。そう、これがADDICT名物・健一さんの無茶ぶり(笑)。この対応力ととても即興とは思えないクオリティーが、次の無茶ぶりを呼ぶ所以であることは間違いないはず。

そこから実に自然に「今はなき世の中」へ。この絶妙な流れや間といったものも、ADDICTのライヴの完成度に磨きをかけている技とセンスなのだと思う。間奏部分で向かい合い、共に刻む健一さんと志門さんのその下で、二人の音に色を添えるシゲさんのベース。その心地良さに、身を委ねたくさんの手がステージに向けられていたのが印象的だった。

今回、大阪・名古屋・東京の各会場にて数量限定で販売(希望者多数にて抽選)となった、健一さんのサイン入りフーディーについて、「当たった人はおめでとうございます、当たらなかった人はごめんなさい」といった話題にも触れつつ、「アメ村の空気を一回吸わないと歌えない」というほど、ステージ前方の空気が薄れて熱気に包まれた。

そんな大阪公演のラストナンバーは「無題」。歓声とともに会場中が全身で躍動し、フラッシュする照明の中徐々に高まりゆくギター、そしてまるで雷を落とされたかのように激しい重力を感じるMotomさんのドラム。この日最高潮の盛り上がりで、今年最後の大阪は終わった。

◆12月14日【名古屋・新栄SHANGRILA】

ADDICT初の名古屋公演の会場となったのは、繁華街・栄の隣の駅に位置する新栄SHANGRILA。ビルの地下にあり、真っ赤な壁とエメラルドグリーンに赤い睡蓮の花が描かれた、“シャングリラ=桃源郷”を表現したこれぞライヴハウス!というハコだ。

「こんにちは名古屋、ADDICT OF THE TRIP MINDSです」という第一声に沸く場内。ようやく名古屋に来てくれた!という大歓声でのお迎えに、「この柱の後ろには人がいるの?みんな見えてる?」と、左右に大きな柱のある造りを気にかける健一さん。見えてない人に呼び掛けたところ、フロア中央からの元気のよい返事に思わず「え、見えてないの?オレは見えるけど、あなたはオレが見えてないの?」という、健一さんならではのやりとりですっかり和やかな雰囲気に。
休憩を挟んだ後も、盛り上がりたいのかそうじゃないのか?というちょっと変わった問いに、盛り上がりたい観客に対して「でもオレはそうでもないんだよ(笑)」と言いながらも「じゃあ、ちょっとだけ盛り上がるやつ」と演奏したところ、結局、間奏で前に出てくるギター二人に煽られるように、“ちょっと”ではなく盛り上がった「あの娘は言う」。タイトなドラムとループするベースがズンズンと体の奥底に響き、紫に妖しく灯る「特別な人」では、向かい合う呼吸を合わせるように絡み合う二本のギター。特別なこの夜の“奇跡”まであと少し…。
そこに一瞬にして雨雲のように立ち込める、救われたい救われない想い。揺れ動くその心情が、ギターの音色でつぶさに感じ取れる「誰もが気付かない日の午後」。描かれているのは当事者の視点でありながら、それを見つめる視線のどちらも感じることができるような、悲しさと悔しさと絶望感。自分だったら、それぞれの立場で何を選択する?様々な想いがぐるぐると頭の中を巡らずにはいられない。

そして、ギターを抱きかかえながら歌い出した「推察の最中で」。ジャジーなステップでステージの上も下も体を揺らした後は、イントロのギターリフと志門さんの上げた手に反応するように、客席にたくさんの手が楽しそうに揺れた「輝ける亡者」。途中メンバー紹介が入り、「今日この日、この名古屋で、皆と同じ時間を過ごせてすごく幸せでした」という言葉に会場中に笑顔がこぼれ、とってもハッピーな空気の中本編が終了した。

わずかな光を灯すステージに志門さんがひとり、しっとりと音を奏で始める。やがて、暗闇の後方から悲鳴のような歓声が上がり、そこには何と健一さんの姿が…!!この日はフロアを横切るのも大変なほど、しっかり後ろまで観客が入っていたにも関わらず、PA席の前のほんのわずかな隙間に組まれた台の上に、赤い花をあしらった一本のマイクスタンドが密かにこの時を待っていたのだ。まさにファンの中に埋もれながら、という衝撃のサプライズに興奮が収まらぬ中、静かに歌い始めたのは「何も知らない」。ポツリポツリと呟くように、悲しみを打ち明けるかのように…とめどない想いに《君といたくて でも君がいなくて》と涙が頬を伝った。震える声で絞り出す《No more war》。時に悲しみは怒りよりも心に訴えかける。瞬きもできないほど見つめるそのたくさんの目に、胸に、きっと充分すぎるほど伝わったのではないだろうか。そして、まるでこの悲しさをまるごと包み込むような「偽り感じて」では、健一さんがマイクを客席に向け《ラララ…》を共に歌う場面も。なんとも言えない、優しさと愛に満ち溢れた空間がそこにはあった。

「ぬくもり求め」のイントロが始まると、マイクを手に今度はなんと観客の中を歩いてステージへ! つい先ほどまでとは別人のように高ぶる感情を露わにする健一さんに、手に取るように呼応して前のめりに上半身を揺らす人々。最後の場面で、これまでこの曲で見たことないほどたくさんの手が、ステージに向けて伸ばされているのを見た。演奏や表現はもちろんだが、狭い空間で間近に感じるからこそ伝わる熱というのもあるんじゃないか、そんなことを思ったりもした。

その後は、曲からのギャップがまた一段と激しいMCに。“シャングリラ”がどういう意味か?からのピンクな話題や(笑)、FCという呼び方がイヤで名付けた“AddicTripS”に入っていない人に理由を聞いてみたり(笑)。シゲさん個人のファンだから、という回答に思わずテレまくるシゲさん。

そんなシゲさんの、弾むようなベースが向こうからやってくる「幻影」がラストのナンバー。躍動を誘うMotomさんのドラムに、客席も一気にヒートアップ!弾けるライトの中で頭を振りまくる健一さん。熱気と大拍手に包まれ、思わぬサプライズもあったADDICT初の名古屋公演が終了。またひとつ、ADDICTにとって忘れられない記憶が刻まれた夜となった。

***** SET LIST◆心斎橋 club JOULE *****          
JAM
1. 孤独に自由に
2. 心の中の銃(New ver.)
3. 旋律
4. 幸せな日々
5. 今はなき世の中 
6. あの娘は言う
7. 特別な人
8. 誰もが気付かない日の午後
9. 推察の最中で
10.輝ける亡者

11.何も知らない(Shimon & Kenichi ver.)
12.偽り感じて(Shimon & Kenichi ver.)
13.ぬくもり求め
14.無題

***** SET LIST◆新栄SHANGRILA *****
JAM
1. 孤独に自由に
2. 心の中の銃(New ver.)
3. 旋律
4. 幸せな日々
5. 今はなき世の中 
6. あの娘は言う
7. 特別な人
8. 誰もが気付かない日の午後
9. 推察の最中で
10.輝ける亡者

11.何も知らない(Shimon & Kenichi ver.)
12.偽り感じて(Shimon & Kenichi ver.)
13.ぬくもり求め
14.幻影

◆Photographer : Keisuke Nagoshi


K子。/音楽ライター
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。
https://x.com/Lheaven_7

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