【LIVE REPORT】2025.10.18-19 『2025 ADDICT OF THE TRIP MINDS LIVE -AUTUMN-』at 羽田TIAT SKY HALL
2025 ADDICT OF THE TRIP MINDS LIVE -AUTUMN-
2025.10.18-19
羽田TIAT SKY HALL
Text.K子。

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今回は、昨年2025年10月に行われたライヴのレポートとなり、翌年1月11日に発売となったBlu-ray『INTRODUCTION,DEVELOPMENT,AND CLIMAX ~ADDICT OF THE TRIP MINDS 2024 LIVE -WINTER-~』の情報解禁、そして1993年の第一期ADDICTからバンドの世界観を存在感あるベースで牽引してきた、シゲさん(川上シゲ)の脱退前ラストライヴとなりました。
2021年の第二期ADDICTから一区切りとなったレポートをご覧ください。
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記録的な酷暑が続いた夏の残像も過ぎ、25℃前後という気候に恵まれた短い秋の休日。1日目は晴天、2日目は雨となったが、来場する人たちに天気の心配はほぼ無用である。なぜなら会場は、“TIAT SKY HALL”。“T(tokyo), I(international), A(air), T(terminal)”を名に持つ、羽田空港第3ターミナル内にある。江戸小路やおこのみ横丁といった古き良き「和」の街並を再現したエリアの、はねだ日本橋という立派な木造の橋を超えたその先が、目指すTRIP小屋だ。国際線ターミナルのため、時折、外国人が入口のポスターの前で立ち止まり、中を伺っている。

今回、追加公演を含めた2days 4公演のセットリストはすべて同じ。但し、2日間の印象を大きく変えたのはステージの演出だろう。初日には初の試みとなる天井やステージから延びる長いバーライト、翌日はもはやADDICTの王道ともいえるオイルアートがステージを彩る。セットリストが同じだからこそ、バンドと融合した時のそれぞれが創り出す世界観の違いを、より感じることができるのではないだろうか。開演を待つ間とりわけ気になったのは、2日目夜公演にだけスクリーンに出現した、大きな瞳が瞬きをしながらこちらを見つめていたこと。悩まし気なその視線に誘われながら、時を待つ。(以下、前半は初日、後半は2日目をベースにお伝えします)

Anyma & Rezzの「Entropy(feat.fknsyd)」をバックに一人また一人と現れるメンバーの姿に拍手が沸き起こり、やがてハコ一面に充満した志門さんがうねり出す渦巻く闇を、「輝ける亡者」の軽快な健一さんのギターが切り裂いた!一斉に観客が立ち上がり縦ノリに揺れる。4月の神戸・月世界、5月の品川教会と、着席だった反動なのか、それとも約半年ぶりとなるライヴを待ち望んでいた表れなのか。

その流れのまま、軽やかなアルペジオに合わせステージの上も下も小刻みにリズムをとる「今はなき世の中」へ。弾むベースの音符に合わせ、まるで鍵盤を弾いているかのように青白いライトがひとつまたひとつ点いたり消えたり…これまでADDICTにはなかった、シンプルでいて逆に斬新な魅せ方である。

そこから間髪空けることなくベースソロになだれ込み「ベース、川上シゲ」の声と拍手を機に、「推察の最中で」の心の底に忍び込んでくるような低音と、艶やかなギターが絡み合う。ピンク~紫~青のグラデーションが妖しく灯る。2日目の公演では、この曲の間奏部分で簡単なMCが差し込まれた。「すべての曲の中、音の中に、気持ちを込めてTRIPしたいと思います」夜には「違う世界になんて行けるわけがない、どうやって行くんだよ(笑)自由に楽しんで」と自虐のように笑っていたが、ライヴから数日後、FCサイトに健一さんが投稿したのは「何度も何度もMIND TRIPしました」という言葉だった。どうやって、ではない。全身で浴びた爆音に脳が溶けだし、感情が揺さぶられ、心の奥底が満たされる。気付いたらもうソコにいるのだ。そしてそれは、どれだけ音に溶け込んだ伝える側の想いを受け取ったか、ということにもなるのだろう。


危うい心情を音で表現したような志門さんのあのイントロが響き、深い深い闇の底を歩くベースの足音、「ぬくもり求め」の壊れそうな想いが空気を一変させる。置き去りにされて伸ばした指先が、ぬくもりを求めて身体を這い、高ぶらせ追い込んでいくドラムの激しさに、腕を髪を振り乱す。そんな激情型のこの曲だが、最終公演ではバックに映る満天の星空の下、健一さんが志門さんの肩を抱いて曲が始まった。それだけで少しだけ何かが救われた、そんな気になれた素敵な演出に感謝したい。大きな拍手の後、「偽り感じて」のギターの音色で一気に会場が優しい空気に包まれ、語りかけるように歌うその横で《ラララ…》と志門さんが口ずさむ。前曲での想いが穏やかな安心に癒されてゆくよう。その安心から今度は、希望へとつながる夜明けを告げるかのような激しいドラムが鳴り響く…「この場所から」だ。この曲の持つ眩しさに誰もが真っすぐにステージを見つめ、心臓に嫌というほど打ちのめしてくるツーバスの連打に圧倒される。左へ右へ前に出てギターを掲げた健一さんが、曲終わりでメンバー紹介をしたところで最初のMCに。



「このままいくと夜公演ができない、明日もできない」と早速休憩を懇願(笑)。健一さんのみステージに残り、最新シークレットトップ情報を…と、2024年末に開催したADDICT初の東名阪ツアーより収録された、2026年1月11日発売のBlu-rayに関する、パッケージの種類や爆音上映会といった詳細な情報を説明すること7分、自分だけ休憩になっていないことに気付き(笑)「皆にそーいうやつ、あーいうやつで言っといて!」と残し休憩へ。えっと…それはどーいうやつですか(笑)?それがわかったのが夜の部。「何か情報上がってました?え、やってくれてないんだ!?」に会場中が大爆笑!つまりXで情報を拡散しといてほしかったらしい(笑)。「詳しいことは昼公演行った人に聞いて」という何とも自由極まりないMCが初日。2日目になると「皆の気持ちや鼓動や想いとか、そういうエネルギーがいっぱい集まってきて、ちょっと気持ち悪くなったので休憩します」「自由な想いと心と愛と、いろんなものが充満していてとても幸せな時間・空気、ありがとうございます。皆様の愛が重たすぎるので空気の入れ替えを」と、どちらにしても健一ワールドが炸裂(笑)。“らしさ”であると共に、演奏中とのギャップがまた魅力でもあるのだろう。


約束通り約7分後、再開とともに足元からシゲさんの深い音色が立ち込め、「孤独に自由に」の気怠さが会場の中を満たしてゆく。呼応するようにゆらゆらと客席が揺れ、その心地良さに思わず目を閉じてしまう。最後の一音が消えるまで大事そうに弦を見つめ、ギターを抱きしめたまま健一さんが闇の中へ…そこに志門さんのギターが唸りを上げ、「特別な人」の軸ともいえるベースのリフレインがその妖艶さを肌に振動で伝えてくる。背後に広がる青黒さに赤く煙のごとく燃え盛るオイルが、《世界が終わると言うならば…》と頭を抱え顔を歪めるその心情を、まるで映し出しているかのよう。



そして、今回のライヴでハイライトとなったのが「幸せな日々」。ダイナミックかつ耳に残るあのドラムが始まると、羽織っていたシャツを脱ぎ捨て左右に出て行き客席を煽る。やがて間奏部分で、いつものように歩き回っていた健一さんがマイクを置いて突然ステージの下へ!中央に伸びる通路を跳ねながら拳を回しながら後ろへ進んで行くと、両側の観客も歓声とともに一斉に腕を振り上げ回し始める。客席との間にある境界線を無くしたときの一体感は、やはり格別で気持ちいい。そういえば、腰に巻き付けていたADDICTストールが途中落ちてしまうというアクシデントがあったのもこの曲。首に掛けたり巻いたり、最終的にはすっぽり頭から被った状態で両手を広げてフィニッシュ!


一瞬ハラハラしたが(笑)しっかり小道具として活用するところは流石である。アクシデントと言えばもうひとつ、同じ最終公演にてちょうど次の曲にあたる「一人にしないで」を演奏中、健一さんのギターストラップが外れてしまい、直しに来てくれたスタッフの頭を撫でる、というシーンがあった。きっと「ありがとう」の代わりだったのだろう。ADDICTや健一さんの周りに長い付き合いの人が多いのは、そんなところだよなと見ながらほっこり。
そして、高らかに轟く志門さんのギターソロに、健一さんのザクザク感満載のギターが切り込む「あの娘は言う」。この冒頭の2台のギターのコントラスト、そこに加勢するリズム隊の重力が重なっていく様が、実にスリリングで観るたびにシビれしてまう。バックにはひび割れた地面を思わすアニメーションの質感。それがメンバーの身体にも投影され、不思議な異空間を生み出している。


そんな中迎えた本編最後の曲は「無題」。イントロを聴くなり場内は大盛り上がり!爆発したみたいに一気に床が揺れ、目に飛び込んでくる顔は誰もが嬉しそう。《早く早く早く…》と両手の指を動かせば、応えるように腕を振り上げてくる。と、中盤何かがいつもと違うことに気付く。一定に刻むMotomさんのドラムに合わせて志門さんが繰り返すフレーズ、そこに健一さんのアクセントとなるギターと聴き慣れない歌い方、そのすべてがこの曲の混沌とした世界観をより深みへと連れてゆく。なんだこれは?もう、否応なしに盛り上がるしかない。気付けば、開演前映し出されていたあの大きな瞳が、後ろからこっちをジッと見ていた。このバンドのアレンジ力とセンスはやはり只者ではないことを再確認。大きな拍手を浴び、深いお辞儀と投げキスでその場を後にして、本編が終わった。


数分後、アンコールという位置づけながら事前に予告していた、「あと2曲残ってるから」を果たすためにメンバーが再び登場。「ライヴ重視の生き方なんですけど、でもこの映像観たらちょっと感動して、これはちゃんと形にして皆に自信を持って届けたいなと」そんな珍しく健一さんが推す映像美溢れるBlu-rayの話や、今回が2025年の〆のライヴということで、「今年もお世話になりました。皆さんよいお年を」とちょっと早い今年最後のご挨拶(笑)。そして、ラスト2曲に入る前に次に演奏される曲についてこんな説明が。「23,4歳くらいの時にできた曲なんだけど、リハでめちゃくちゃ速くやってみたら当時はもっと速かったよってなって、ものすごく速くやったら結構カッコよかったんですよ。でも昨日の昼間やったら、皆誰も着いてこれなくなっちゃって(笑)。それリベンジしてみたいんですけど、いいですか?」会場はもちろん大喜び!実は今回4公演のうち、一旦諦めてしまった(笑)初日の夜の部のみ通常ver.で演奏され、他は“超最速バージョン”となった「旋律」。客席からの「頑張ってー!」の声に健一さんが返した言葉が、個人的には全4公演の中で一番気持ちが高揚した瞬間だった。「あのね、皆も大事だよ!頑張るのは俺らだけじゃない」そう、ライヴはステージを観るだけのものじゃない、そこにいる全員で作り上げ、分かち合うものだ。その言葉を合図に、弾ける歓声と共に全身全力で楽しむ姿は、見ていてなんとも清々しいくらい。そして、全速力で転がるドラムに弾むベース、合いの手のようにジャーッ、ジャーッと入るギター、途中《トゥル ルル…》のパートだけスローになってまた走り出す!手元のメモにはこう書いてある「血が騒ぐ ヤバいやつだ!」もうADDICTに完敗!言うまでもなく大盛り上がりのままラストナンバーへ。
今年最後の一曲となるのは、昨年の夏に初披露されて以来人気の「幻影」New ver.!Motomさんのダンダンダン!というドラムと健一さんのノイズギターが聴く者を躍動させる。この2曲を最後にもってくるあたり、やっぱりこのバンド、ヤンチャだなと(笑)。最後の最後、もう一度メンバー紹介をして「今日は本当に会えて良かったです、ありがとう!」と、羽田での2days 4公演が終了した。


今回、健一さんがステージを降りた「幸せな日々」がハイライトと書いたが、本当のところは曲の並びを含めた最後の3曲がそうだったと思っている。ライヴ後の参加した人たちの感想でも高評価だった「無題」には、バージョン名は無いという。つまり、これからも演奏され続ける決まった形ではない、ということだ。アレンジがオリジナルを超えてゆく、そんなADDCITの強みを前面に魅せ付けたライヴだったのではないだろうか。
「来年はいろんなことやれたらいいなと思ってます」
どんなことやってくれるのか今から楽しみは尽きないが、まずは第一弾となるBlu-rayに大いなる期待をしたい。

***** SET LIST *****
1. 輝ける亡者
2. 今はなき世の中
3. 推察の最中で
4. ぬくもり求め
5. 偽り感じて
6. この場所から
7. 孤独に自由に
8. 特別な人
9. 幸せな日々
10. 一人にしないで
11. あの娘は言う
12. 無題
13. 旋律
14. 幻影

◆Photographer : Keisuke Nagoshi & yusong kwon
K子。/音楽ライター/ X
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。

