【LIVE REPORT】2026.5.4-5 『2026 ADDICT OF THE TRIP MINDS LIVE at SHINAGAWA Church』at キリスト品川教会 グローリア・チャペル
2026 ADDICT OF THE TRIP MINDS LIVE at SHINAGAWA Church
2026.5.4 mon./5 tue.
キリスト品川教会 グローリア・チャペル
Text.K子。

雨模様の昨年とは打って変わり、二日間ともに空は見事な快晴。自然光が一段と差し込む空間に聖なる歌声が流れている。定刻が過ぎ健一さんがひとり姿を現すと、ADDICTロゴマークと入れ代わって、美しい切子模様に正三角形△▽を重ねた六芒星の中央には、神々しく十字架が浮かび上がり、それを見上げて弾く一音一音だけが静寂に響く。ギター一本の「あの娘は言う」で始まり、次の「旋律」では純子さんのバイオリンが加わると、二つの楽器がまるで呼吸を合わせるかのように、優しく寄り添いそして激しく共鳴し合う。《チュル ルル チュチュチュルル…》をなぞるようなバイオリンもまた印象的だ。


昨年のGWに行われ、鮮烈な印象を残した品川教会でのライヴが、同じゲスト(vin:牧山純子さん、cho:シュペラさん)、同じセットリスト、同じ衣装、同じ“No mc No encore”にて、同じGWに再演。ただし、昨年と大きく違うことが一つある。舞台の幕が変わるように、純子さんに代わって下手より志門さん、Motomさんと続くその後に視線が注がれ、現れたのは黒いワンピースにブーツ姿の女性ベーシスト・タバサ。
その新生ADDICTが発する一曲目は「誰もが気付かない日の午後」。街のネオンがゆらゆらと滲んで、思い悩みさ迷い歩いているような心情を背後に、志門さんが顔を歪めギターをかき鳴らせば、苦しみを振り払うように激しくプレイするタバサさん。その音はシゲさんとはまた違う、ふくよかで輪郭のある際立った粒の連鎖。同じ曲がまた、違う表情を見せてゆく。

そのまま「ぬくもり求め」「特別な人」と続くが、4日のNIGHT公演のみ、昨年同様「誰もが気付かない日の午後」が「孤独に自由に」、「特別な人」が「今はなき世の中」に入れ替わって演奏された。
そして中盤ブロックでは、「偽り感じて」の途中でシュペラさんが登場。音を身体で表現する彼女は、さながら教会に舞い降りた裸足の天女のよう。その伸びやかで優しさに満ちた歌声が、健一さんとの見事なハーモニーとなって、映し出された気泡とともに天に昇っていく。
そんな白昼夢のようなひとときの後、客席から二人の若者が立ち上がりステージ前方へ。手には何かが書かれた紙を持っている。「わたしたち」「ウクライナ人」「ミラ」「ニキータ」交互にそれを一枚づつめくり、そのまま音を立てて床に落ちていく。その音が、たった一本のギターが表現する淋しさにも似た情景とともに、ひとつひとつの言葉を浮き彫りにしてゆく。「希望の」「言葉」「落ち着き」「平和」「健康」「調和」「自由」「独立」「知恵」「安定」「念力」「幸福」「安心」「愛」…NIGHT公演では一人で登場したニキータくんが、すべてを捲り終えたあと眼鏡を外して目頭を押さえ、一礼をした。画面の中の出来事ではない、目の前のその姿に何を思うのか。その流れのまま始まった「何も知らない」の終盤、左右に大きく離れた健一さんとシュペラさんが向かい合い、《君といたくて》《でも君がいなくて》と、絶望に潰されてしまいそうな感情を激しく呼応し合う。そんな二人を見つめながら叩くMotomさんの手も、徐々に力を帯びてゆく。放たれた切なる願い、後ろ姿で止まる二人。《だけどそこにあなたはいない いないから》と、振り向きながらかすかにつぶやくシュペラさんと、安堵と願いを込めて右手を掲げる健一さん。希望の言葉は、いつか当たり前に手の中にある日常となっているはず。そんな未来の一刻でも早い訪れを祈って止まない。
そして、前回クライマックスとなった「幸せな日々」。改めて聴いてみて、この激情バトルになんてぴったりのギターアレンジなのだろうと感心してしまう。ソリッドな錆びた質感の音も実にいい。歌詞のままに、天井から壁を伝い流れる血を浴びながら、剥き出しの怒りをぶつけ合う。そのあまりの迫力と、いつもよりも一段と力のこもった《平和ボケは幸せな日々》に、後ろめたさにも似た胸の痛みに襲われた。かと思えば、マイクスタンドを挟んで写し鏡のような動きを見せる健一さんとシュペラさんが、《貴方には 見破られていたい》と情熱的に手を重ねる姿にドキッとしたのは私だけではないだろう。歌い終えてハグをする二人に、大きな拍手が送られたのは言うまでもない。


シュペラさんと交代で再び純子さんがステージへ。呟くように紡ぐ言葉と、それをなぞるようなピチカート(弦を指で弾くバイオリンの奏法)が印象的な「一人にしないで」を経て、教会ライヴのもうひとつの見せ場でもある「推察の最中で」に繋ぐ。


ベースに合わせてMotomさんがスティックでリズムをとっている音が小さく聴こえ、軽やかなバイオリンの音色に健一さんの足元も軽くステップ♪そして、いよいよ純子さん🎻×志門さん🎸のバトルの時間がやってきた…これは激しい!!あまりの激しさに、5/5の公演ではバイオリンの弓毛が切れるという、なんとも凄まじい光景!ここまで緊張感とスリルを味わえるライヴは、探してもなかなか出逢えるものではないのではないだろうか。そんなバトルの最中、健一さんはステージを降りて中央通路へ。滅多にない、客席側から観るADDICTのライヴは、きっと楽しかったに違いない。

最終公演、純子さんが退場し再び4人だけとなった会場に、厚い雲のようにベースの音が立ち込める。実は、一曲だけ昨年のセットリストと異なっていたことに気付いただろうか。夜公演でのみ演奏されるはずの「孤独に自由に」が差し込まれたのはMotomさんの提案だという。気怠い陶酔感に誘われ、たびたび向い合わせで頭を振り合う健一さんとタバサさん。聴けるはずのなかった嬉しいサプライズの後は、本来ここで演奏される予定だった「幻影」。志門さんの煌めく音色が空間に散りばめ、そこに健一さんのアルペジオが乗っかると、やがて遠くから低音が少し弾みながらやってきて、ダンダンダンッ!とドラムが重なりこの曲を形成してゆく。その様が何ともいえずカッコいい。客席のあちらこちらでは上下に頭が揺れている。そして、拍手を切り裂いて始まった「無題」は、これまで体験したことのないものだった。なんと、ベースのタバサさんが楽しそう跳ねている。何かこれまで固定されていた視界に違う色が塗られた、そんな気持ちになり、どんな景色を見せてくれるのか今後のライヴが楽しみになった。



そしていよいよ最後の一曲は、純子さん・シュペラさんも揃ったオールキャストにて送る「今、再び」。陽炎かと錯覚するほど客席までもがゆらゆらと揺れる映像に、深い海の底へ誘うようなベースが相まって、まるで水の中で水面を見上げているかのよう。そこにカノンをモチーフにしたバイオリンの美しいメロディと天使の歌声…もはやここは天国なんじゃないだろうか?指揮のしぐさを何度となく繰り返していた健一さんが、一瞬の静寂の後、ギターを高く掲げたのを合図にすべての音が一気に溢れ出す。その眩さに、そっと涙をぬぐう人の姿が目に入った。

「ありがとうございました」と口を開いた健一さんが、ADDICT OF THE TRIP MINDSとして全員の紹介を終えた後の晴れやかで和やかな6人の表情に、昨年より増したチーム感を、そして、会場のいちばん後ろでスタッフ全員が大きな拍手を送っている姿に、ゆるぎないこのライヴの成功を、しっかりと感じた最終公演でした。
同じ内容でも、同じライヴは一度もない。だから、See you next year✨⛪✨

◆Photographer : Keisuke Nagoshi

K子。/音楽ライター/ X
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。

