【LIVE REPORT】2025.04.12 ファンクラブ会員限定パーティ『clubTripS vol.3』at 神戸クラブ月世界
ファンクラブ会員限定パーティ『clubTripS vol.3』
2025.4.12 sat.
神戸🌙月世界
Text.K子。

発足から早二年、FC「AddicTripS」の会員限定イベント『clubTripS』が、三度目にしてついに関西に進出!
vol.1は、「南青山BAROOM」にて100名限定でのDJや映像を使ったCLUB PARTY形式。
vol.2は、「竹芝BANK30」にてディナー付を含むライヴ三部構成。
そしてvol3.は、「神戸クラブ月世界」にてDAY&NIGHT二公演でのDJ&ライヴPARTY!
ADDICTらしさを主軸に、いつもより一歩踏み込んだ非現実世界へ誘ってくれるこのイベント、毎回全国各地から集結するAddicTrippersですが、東京と何処か、ということでもなく、東京以外の地での開催、というのはやっぱり嬉しさもひとしおだったのではないだろうか。会いに行くばかりではなく“会いに来てくれる”そんな幸福感。
例年より少しだけ遅く開いた桜の花が、すぐ裏手にある名所・生田神社で最後の一咲を見せる穏やかな春の週末、三宮の繁華街である東門街の会場前には、記念写真を撮りながら待ちきれない表情の人たちがあちらこちらに。そこには、元老舗キャバレーという未知の世界へのワクワク感も感じられる。健一さんと同じ年に生まれ、歴史と重みを醸し出し、古き良き「あの時代」の姿をそのままに残す会場内には、弧を描くようにラグジュアリーなソファが配置され、頭上には見たこともないような豪華絢爛なシャンデリア。“月世界”自体が今回の最大の演出になるのは間違いない。

その扉一枚隔てた先に広がる異世界へと、ADDICTからの招待状を手にした笑顔が続々と入場。そして、それを奥のフロアで待っていたのは、シークレットDJと告知されていた“DJ KENICHI OKAMOTO”!いきなりの状況に皆一瞬息を止め、ライトを浴びることもなく時折口づさみ、体を揺らしながら黙々とMIXする姿と、流れる音楽にしばし集中している様子。バグルス「Video Killed The Radio Star」、ジーザス・ジョーンズ「Right Here Right Now」、ロバート・パーマー「Addicted To Love」、パニック「TAUFE」など、昼夜通して誰もが耳にしたことがあるような懐かしいものから、ルーツになっていると思われるような曲まで、健一さんのアンテナに触れた曲たちが入場からライヴ開始までの一時間、皆様をおもてなし。

と同時に、もうひとつ来場者を笑顔にしたのは、華やかでセンスの良いディスプレイと可愛らしい軽食たち。中でも目を奪われたのは“AddicTripS”のロゴマークがプリントされたマカロン❤そのキュートさは食べてしまうのがもったいないくらいだ。ベロアのソファに座りそれを頬張りながら、目にはDJ K.O.と耳には選ばれし曲たち…なんて贅沢なひととき✨

やがて健一さんがその場を後にすると、暗闇の中でメンバー三人がスタンバイ。今回、ステージの形状の問題で、Dr.Motomさんは上手側・志門さんの横へ。普段なかなか近くで観ることのないドラム演奏が足元まで見えるこの立ち位置も、ここでしか見られない“特別ver.”のひとつである。夕闇の音色が空間に灯り、シゲさんのベースが一段ずつ階段を上ってゆく足音のように響く…「推察の最中で」だ。改めて登場の健一さんに拍手が起こり、円形の吹き抜けにそれぞれの音がこだまする。繰り返し繰り返し高まる感情、力一杯振り下ろしたその腕は何を壊すのか。そこに、太く低く漂うベースとともに「孤独に自由に」の心地の良い気怠さが立ち込める。タイトに輪郭を表しながら刻むドラム、《どこまででも~》と志門さんが口ずさみ、そういえば、前回のツアーでもこの曲で一緒に歌っていたのを思い出した。間奏で向かい合い、音を交換し合うギタリスト二人。きっと二人にしかわからない気持ち良さがあるに違いない。

大きな拍手で演奏を終え「clubTripS vol.3 IN 月世界へようこそ」と、DAY公演ではここでメンバー紹介が行われた。「今日はFCの会みたいなことでしょ?だから何やっても大丈夫だってことで(笑)、一曲一曲休みながらやろうと思ってます」その言葉の通り、この日のセットリスト全10曲のうち、続けて演奏されたのはDAYで2か所、NIGHTで3か所のみ、それ以外の曲間は見事にMCが入っている。これもまた、この日にしか味わえない“ゆるADDICT”だ。フリードリンクだからと客席にドリンクを取りに行くことを勧めれば、NIGHT公演ではかなりの人が席を立ち「こんなにいっぱい行くんだ!?」とメンバーも驚いてしまうほど観ている側もゆるゆる(笑)。とここで、例の健一さんの無茶ぶりが発動!「皆帰って来るまで志門さん、Aの音で何か」これはvol.1の再来か!?と思ったが、あの時と違うのはメンバー全員がステージに残っていること。まるで黙って聴いているのが我慢できなくなったかのように、途中からは4人とも参加しての贅沢なセッションがBGMに。こんなところに、ADDICTという“バンド”らしさを感じてしまう。
その流れのまま「今はなき世の中」へ。健一さんのアルペジオが一音ごとにきらきら光り、かろやかに弾みながら乗っかってくるシゲさんのその音が上半身の揺れを誘う。この日はメンバー個々に当たるピンスポットが、とてもわかりやすく一人一人に降り注いでいた印象があり、この曲もそんな一曲だった。


そして曲が終わったと思ったら始まったのは、まさかのクイズコーナー(笑)!「番号何番だっけ…」というのを聞いて、回答者が選ばれると気付いた客席からは悲鳴のような歓声が!そう、今回いちばんいつものADDICTと違っている点はコレ!メンバーの即席三択で、見事正解した人には健一さんから男闘呼組ピックをプレゼント🎁何でも、ツアーで投げようと大量に作ったんだけど、拾うのに夢中でいいところを見ていなかったり、取り合っている様子が気になって、投げるのをやめたらたくさん余ってしまったのだとか。DAY・NIGHT共に各席種ごとに選び、媚びることなく真実のままに(笑)正解・不正解を告げるメンバーたち。(シゲさんクイズの正解率が高かったのは、シゲさんがわかりやすい人だったから・笑?)様々なクイズが出されたが、志門さんがいちばん最初にコピーした曲は何か?という問いでは、実際にギターで弾いて出題。選択肢のジミ・ヘンドリックス「Purple Haze」の時には、健一さんが歌い出すという場面も。(正解はB’z好きとのことで「Easy Come, Easy Go!」でした)和やかに盛り上がる雰囲気に、健一さんが思わず「俗に言うファンクラブイベントみたいになってるんですけど…こんなの絶対やりたくないと思ってたのに」と笑う。




そして「心の中のそれにまつわる曲を」と紹介したのが「偽り感じて」(笑)。ADDICTの曲が笑いに包まれながら演奏されるという珍しい状況となったが(笑)、ver.違いで披露されることが多かったこの曲、オリジナルはかなりのお久しぶり。アコースティックでしっとりも素敵だが、やっぱりこっちもいい◎月世界の月明かりが白いシャツを青白く染め、二人が同時に刻む優しい音色。それを聴きながら、本当はどっちが偽り?そんなことを思ってみたりした。 クイズを挟んだ後、暗闇の中でMotomさんだけが浮かび上がり、力強く乱れ打つドラムがいつにも増して体の奥の方まで重く響く。いつもなら会場中に上がる拳は、今日は無い。MCにて、立ってよいのか悩んでいる客席に、何か新しい気付きがあるかもしれないから、と座ったままを勧める場面があった。自分では選ばない状況というのは、時に新たな発見や感情を与えてくれる。「幸せな日々」で表現されている現実を、改めて冷静に見つめることができる機会になったのではないだろうか。


NIGHT公演では、この翌日から始まる大阪万博の話題を経て「ぬくもり求め」へ。ただでさえ近い前方席を前に、さらに張り出たモニター置き場まで一歩踏み出し《ここまでどうして来たの 誰かと一緒に来たの その誰かはどこの誰なの》と、一人ずつ指を差して問いかける。所狭しとステージを歩き回るのは、行き場のない感情の表れなのか。足早に駆け上がるドラムに髪を振り乱し、その想いを爆発させる。

そのまま、志門さんの哀愁漂う音色が轟き、健一さんのリフが鮮やかに重なって「あの娘は言う」に。シゲさんの指が右も左も激しく動き、観客は座りながらも足でリズムを取り、頷くように頭を揺らす。この日客席が立ち上がりたい気持ちをいちばん押さえていたのはこの曲だったのではないだろうか。

MCを挟み、明るいままの空間にMotomさんのスティックとペダルが激しく畳みかける。「この場所から」を聴くと、いつも眩しいほどの希望を感じるのだが、個人的には、全編通して何かを呼び起こしてくれるようなこのドラムと、白い世界、あともうひとつ《終わる前に》という言葉。その三つが改めて沁みたこの日の演奏だった。
そこに煌めきながら揺らめく健一さんのギター、底深くからベースが近づいてきて、志門さんのギターが唸る。タンタンタンッ!というドラムのリズムに合わせるように照明がフラッシュ!これは昨年夏のライヴで披露された「幻影」のNew ver.だ!躍動感あふれるサウンドに、気付けばステージ上のメンバーは汗だく。

そんな白熱した後の最後のMCでは、「神戸というのが、皆さんにとって遠いのか近いのかわからないけど、この“月世界”という場所はちょっといいなと思ってるんで、機会があったらまたやりたい」ということや、「皆からいただくもので欲しい“物”は無いんですよ。単純にこうしてライヴに来てくれるだけで、皆さんの気持ちは充分いただいているんで」という感謝が伝えられたところで、秋にライヴを予定しているという嬉しいお知らせが!そして「最後に、ここに来てくれたSpecial(特別)な人にこの曲を捧げますが…」ん?「が」?「この曲が終わったら別の曲が流れるんで、そしたら(両手で帰ってのしぐさ)」(爆)!!いや、何がすごいって、許されるどころか、これで大爆笑とれるのはこの人くらいなんじゃないだろうか(笑)。さすが岡本健一!

ということで、clubTripSラストの一曲は「特別な人」。まるで特別な夜に、月の下、再び巡り合う約束を交わすかのよう。悲鳴のようにギターが泣き、規則正しく刻むドラム、シゲさんの弾く音が足元から伝わってくる。最後までADDICTの世界観にどっぷり包まれ、大歓声の中ライヴが終了。客席側だけでなく、1F・2Fの端から端まで手を振るメンバーの笑顔が、実に嬉しそうで印象的だった。

今回、たくさんの“特別”があったように感じている。この日の公演を観て真っ先に頭に浮かんだのは、二年前FCについてのインタビューをした際(2023.2.2投稿分)、FC限定イベントでライヴ以外に何かやったりしないのか?という質問に、健一さんから返ってきた言葉だ。
「めちゃめちゃ媚び売ってるみたいじゃん(笑)」 FCのイベントに求めているものは人それぞれかとは思うが、私はやっぱりアレは「偽り」とは言い切れなかったんじゃないかと思ったりしている(笑)。ともあれ、初地方開催のclubTripS vol.3は無事終了◎そして、月の世界から聖なる世界へバトンタッチ!5月6日、品川教会で次回はどんな世界に連れてってくれるのか。答えはもう目の前!
***** DAY&NIGHT◇SET LIST *****
1. 推察の最中で
2. 孤独に自由に
3. 今はなき世の中
4. 偽り感じて
5. 幸せな日々
6. ぬくもり求め
7. あの娘は言う
8. この場所から
9. 幻影(New ver.)
10.特別な人

◆Photographer : Keisuke Nagoshi
.+.+.+.+《AOTM公認ファンクラブ AddicTripS》+.+.+.+.
次回4th.会員募集は10月中旬~12月中旬を予定しています。
(募集は年1回となります)
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K子。/音楽ライター/ X
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。