《アルバム『Acoustic』:Interview with 健一&志門》後編

前編ではアルバム全体にまつわる話を聞かせてもらったが、後編では一曲ずつ全八曲分のエピソードをお届け。
新曲のレコーディング中にスタジオにお邪魔したこともあり、モード切り替えのためにも実際に『Acoustic』の音源を聴きながらのトークとなりました。
◆旋律
健一さん(以下K) 今回曲順に関しては俺が決めたんだけど、これ一曲目にしよっていうのは最初から決めてましたね。全曲聴いてみて、「旋律」一発目にして、「心の中の銃」の位置が結構ポイントだから、これは早めにしといたほうがいいのかなとか、あと歌詞の流れとか含めて選んだ感じ。
志門さん(以下S) 『relax TripS』とほぼアレンジは変わってないですが、この曲すごくいいと思います。
K 思ったより暗いっていうか哀しげに始まるから、だからコーラスになった時にちょっとハモリを入れたいなって思ったんだよね。(ハモリのとこを聴きながら)いいな、これ(笑)。
S 久々に聴きましたけどいいですね。
----この曲がいちばん入眠時にいいなと思いました。
K でも俺、音楽って聴きながら寝れないんだよね。ずっと聴いちゃうのよ。(えっ、寝る間際とかに聴けるようなアルバムにって言ってたのに…!? 笑)
----じゃあ、あまり興味がない曲だったら大丈夫なんじゃないですか?
K 興味がない曲は聴かないじゃん(笑)。(そうだけど💦)ちょっと気持ちのいいリラックスする曲流しながら寝よう、ってしたことがない。余計気持ち良くなるというか、寝てる場合じゃないだろ、もうちょっと聴こうみたいな。(じゃあ皆さんも寝れませんね・笑)
S 僕、わりと寝ようとしてる時に曲聴くと、普段よりテンポが速く聴こえちゃって。
----えっ…
K 寝る間際だからね。
S たぶん自分がめちゃくちゃゆっくりだから、ゆっくりの曲聴いてもいつもよりなんか速いなぁ…って気になって。なんでだろう…じゃあテンポってどうしたらいいんだ? みたいになり始めて(笑)。
----それは職業病ですね(笑)。
K でもさ、歌詞が結構いいなと思ってどれも。
----そういうのが気付けるほどはっきり聴こえますもんね。ライヴだとアコースティックってトータル雰囲気みたいなとこもあるじゃないですか。でもCDだと、詩が聴き取れるのももちろんそうなんですけど、すごい一音一音がクリアで何やってるかとかがすごいわかるのがいいなと思いました。
S 言葉のニュアンスもね、すごく伝わりやすいから。
K なんか前のよりこっちの方がいいなとかって思ったりもするし(笑)。これはこれでね。

◆今はなき世の中
K この曲もほんと最初の頃からやってるから、しかも構成がシンプルじゃない? だから余計に毎回アレンジが変わってくみたいなのがあったんだけど。
----『relax Trips』と比べても、ギターのアプローチが面白いなと。
K フレーズが違うよね、間奏とか、AメロとかBメロとか。
S 確かに、真ん中はずいぶん変わったかもしれない。
K (聴きながら)いいんだよねぇ…(しみじみ)。ちょっと気分が明るくなる。
----入りが爽やかになってますよね。
K そうそう、このストロークが入ってるのがやっぱいいんだよね。
S そうですね、たぶんこのコード進行が爽やかになったのかな? でも、そもそもがそんなに暗い曲じゃないんで、コード的にも。それがアコースティックで余計際立った感じですかね。
◆ぬくもり求め
----この曲は結構、アコースティックにはハマリ曲ですよね。あと“音”がいっぱい入ってるなと思いました。あえて残してる音。
S そうそう、ノイズね。指の音とか、引っかかるような音とか、キュッとかね。この曲はギター一本だし、一回録ってこれで、みたいな。
K 消さなくても消えててもいいんじゃないかってことだよね。
----その生々しさがすごく効果的に映えてますね。
S うん、これはそれを目指して。使ってるギターもちっちゃめの、古い弦をあえて張りなおさないで使って、そういう質感でやってます。

◆心の中の銃
----「心の中の銃」は『relax TripS』からはそのまんまですが、原曲からはいちばん大化けした曲ですよね。この手拍子はお二人で?
S ケンゴくん(スタッフ)と三人で。
K なんかやっぱり、言葉が余計明確になってくるから、全体も通してだけど、歌を「歌う」っていうよりは「しゃべる」とか歌詞やストーリーを「伝える」って感覚を優先した感じ。でもさ、志門うまいよね~、いろんな種類のギターを弾けるというかさ。急になんか南部っぽいっていうか、土っぽく感じさせたりとか、いろんな世界を曲によってしかもギター一本で、結局アコースティックギターの弾き方でしょ? 選ぶコードとか、それで世界を変えてくるから、これは楽しいなぁと思って。
S アレンジしながら俺がいちばん楽しんでましたからね(笑)。
----いや、だって本当に原曲からって考えるとものすごいどの曲も変わってるじゃないですか? その変わってる中には、ものすごい数のフレーズがあって、よくこんなに出てくるなと思うんですけど。
K ほんとだよね。よくいっぱい手数持ってんなって。
S いや、元の曲がそもそも自由度が高いのが多いから、いろいろできるよな~っていう。
K そのままってのも全然ありなんだと思うけど、同じふうにやっても同じには結局ならないじゃない? それだったらもう同じじゃなくていいじゃんっていう、いかようにもその世界を変えられる技術を志門は持ってるよね。だって、ドラムとかベースっていうのは土台がある上で世界を作っていくんで。
----土台だからそんなに変わりようがない。
K そうそう、リズムが変わるとか何が変わるとかってあるけど、そこに色彩を加えるのってギターなんじゃないかなって思う。
----わかります、このアルバム聴いてて、ギターの志門さんの作るフレーズって、“曲の顔(表情)”を変えるなって思ったんですよ。なんかすごく違う顔に見える、曲が。
K そうだね。だってイントロ変えちゃうんだもん(笑)。そりゃ違う顔になるよね。
◆特別な人
S これはめちゃくちゃ変わってるか(笑)。
K 歌い出すまでわからないもんね。でもめちゃめちゃいい、このストロークが。
(しばし聴き入る)
K 囁きとかウィスパーで歌うっていうのが、こんなに難しいんだ? と思って。でも、難しいなと思ったり、あ、全然楽だなって思ったり、こんなに気持ち入れなくていいのかなと思ったり。
S 確かに、感情込めすぎると…
K そう、力強くなっちゃうしとか、伸ばすとギターとぶつかるとかさ。
S いろいろやりましたね。
K そう、いろいろ試せるから面白いなって。じゃあ人格変えてみようとか人間性を変えてみようみたいな(←役者ならではの発想?)。女々しさを出そうとか、執念っぽさを出そうとか、さ(笑)。いろんな発見があったよね、レコーディングしながら。
S 意外と、いつもの爆音でしっかりガーッと歌うのも歌詞生きるけど、これくらいの囁くような感じでも、めちゃくちゃ歌詞の輪郭が出てくるっていうか、面白いですよね。
----途中で一回止まるとことか、いいアレンジですよね。
二人 どこ? あははは(←覚えてなくて笑っちゃってる)。
----《見せつける》ジャラ~ン♪
S あ~、そこ空きますね(笑)。
K ちょっとね、ドキドキするところとか緊張するところとか、より近く感じるよね。

◆偽り感じて
K 「偽り」も、これほんとにいいなぁと思って。Aメロのコード進行の展開なんてすごい美しいよね。最初めちゃめちゃ歌いずらかった(笑)。何だこの音っていう。でもハモると気持ちいいんだよねー。
S なんか、僕の中の健一さんのイメージは綺麗な感じもすごくあって、そうするとギターのコードもそうなっていったってのはあります。もっとシンプルでもよかったかな~と思いながらも、結構生かせたんじゃないかなと。
K いや、いいと思うよこれ。シュペラとか呼んでコーラス入れてもらおうかとかも思ったけど、もう二人の音だけ!みたいな感じで。
----それはそれで、きっと素敵なんだと思うんですけど、ね。
K そう。で、途中でコーラス思い付いたから、「入れてもいい?」って志門に許可もらったりなんかして(笑)。
S やってみましょう!って、録ってみると全然印象変わる。
K ま、ここはいらないなって時もいっぱいあるんだけどね。
----健一さんの美しいってのはどういうのを言うんですか?
K 天使がいて、田園とか、ほんと美しい世界ってところには俺は居れないんだよね(笑)。どうしても花とかむしってぐしゃぐしゃにしたくなる(笑)。じゃあほんとに暗くてドロドロでっていう世界が好きかっていったら、そっちもあんまり好きじゃないわけ。
S 要は新品のぴかぴかのギターとかは嫌っていう。
K そう、テカッテカのツヤッツヤのピカッピカのものがあると、ほんとにやすりかけたくなる(笑)。なんだろうね、あれ。
----そういうイメージが志門さんの中であったってことですよね。
S だから、アコースティックの音に関してもそういうところを残してるというか。丸ごと綺麗に処理するんじゃなくて、リズムのヨレとか多少の不協和音とかを残してあるっていうのは、そういう意味もあるかもしれないです。
----それが、健一さんの言う歌いずらい引っかかる音、ってことなんでしょうね。
◆幸せな日々
S これ、イントロのメロディは健一さんのアイデアです。
K 『relax TripS』の時にスタジオでね。このフレーズ暗っ! ていう(←二人で笑ってて楽しそう)。
----哀愁漂ってますよね~。
K その時は俺もギター持ってたからやってみたら…
S いいですね~って。
----だいぶインパクトありますよ。
K あるよね。
S 僕だと考えつかない。
K でもこれ、何が元かってのがわかった(笑)。
(曲を流してくれてる)

S コード進行一緒ですね。
----あっ…! 入りの一音が似てる(笑)!
K そう、これに似てる、これの影響だ! と思って。弾きながらこの物悲しさって何の曲だろう?ってずっと思ってたんだけど、Guns N' Rosesの「Civil War」だ! って。ね、似てたよね(笑)。
S まったく一緒じゃなくて良かったですね(笑)。
K そうね(笑)。あの時は何の曲か思い出せなかったんだけど。これもいろんなアレンジが生まれてる曲だよね、ライヴでも。
S これはサビの印象がすごく変わってると思います。サビの歌の強弱が結構録りなおしましたよね。優しいver.激しいver.とか。
K そう、これダメだ…とかってかなり何回も録り直した。いろんなパターンをやってみたり。
他の楽器の音がないから当たり前のことなんだけど、こんなにそのままの声がダイレクトに出ちゃうんだ? って。
S 難しいですよね、声の張り方とアコースティックのバランスが。
K そこの加減が自分の中の加減になるわけで、その調整がなかなか面白かった。まずどういう声を出したらいいのか、そこをどうやって挑もうみたいな。それが自分の素のままだと挑めないわけで、これは革命家みたいな人の歌だからな~、てことはあんまり弱々しく歌ってもな、とか。台本もらって、舞台で、役柄で、とかっていう、そういう感覚にも近い感じはしたよね。
S 音聴いてイメージしてなんか音出してみて、これ違うなっていうのももちろん沢山あるし、パッとハマった瞬間にはそっからまた流れてスラスラいけるとか、そういう感覚ですねたぶん。
◆この場所から
----その前の「幸せな日々」からの対比が面白いですね。
K そうね、「幸せな日々」があったからここにいったみたいなことだよね。「この場所から」で終われたらいいなぁ…って思ってたら、ちゃんとそういう感じになったから。
----アルバムのトータルの曲順としても、すごい理想的な終わりになりましたね。
K うん。サビもいいんだよね。コーラスとか入ってよりチルな感じになってる。こういう歌い方も『relax TripS』の時にはやってないし。
S わりと明るめに聴こえる感じで。
----原曲の明るい感じとはまた違った、穏やかな優しい明るさですね。
S 例えば僕が同じように演奏しても、たぶんライヴのその瞬間だとまた歌い方変わるんでしょうね。その声の出し方・会場の雰囲気とかで。
K どうなるんだろうね。11月7日の『realx TripS vol.2』はこれを中心にやるような感じだけど、でも新曲もやりたいね(笑)。いま録ってるやつのアコースティックver.も、いいかもしれない✨

今回、音源を聴いた時のいちばんの感想は、気が遠くなりそうなほどの志門さんのアレンジ力と生み出すフレーズの多彩さだったが、きっと志門さんのことだから、それさえも苦労というよりは楽しんでいたのだろう、と思っていた。
そして、このインタビューにて一時間強にも渡りたっぷりとお二人に話しを聞いたあとの感想は、聞いていると切々と「大変さ」を感じるのに、その度に健一さんが「大変だった」ではなく「面白い」と言っていたこと。
模索しながら辿り着くその過程を楽しめる人なのだな、と。
そんな二人が一緒に創作活動をして楽しくないはずがなく、そうして生まれたこの『Acoustic』の完成度が最高でないわけがない。
オリジナルアルバムではないが、三枚目にして、ADDICTを聴いたことのない人にいちばん勧めたい一枚だ。
ヘッドフォンをして、再生ボタンを押したら、ほら、もう“ここ”にADDICTが。
K子。/音楽ライター/ X
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。

