【LIVE REPORT】 2023.06.25 studio ADDICT / STUDIO LIVE

STUDIO LIVE 06.25.2023 at studio ADDIC T

Text.K 子。

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2020年、世界中がパンデミックに見舞われ、得体のしれないものに脅かされる生活の中で“音楽”というものは“娯楽=必要最低限度ではないもの”とされ、またその集う場所さえも危険なものとしてその表現を激しく制限される状況下に置かれた。
ただ、やはり人類とはすごい生き物で、そんな時こそ新しいものが生まれる。
それまで考えられなかった無観客でのライヴ配信という手段は、家に居ながらライヴを観ることができ、アーティスト側は目の前には居ない人たちへ向けて演奏を届ける。
あれから様々なバリエーションが派生し、それがすっかり当たり前の選択肢となった2023年、ADDICT OF THE TRIP MINDSにとって初となる配信スタジオライヴが行われた。

6月最後の日曜日、男闘呼組のツアー真っただ中に文字通り合間を縫っての収録は、まだ完成したばかりの《STUDIO ADDICT》にて。
この日のセットリストも例に洩れず、当日会場入りしてから健一さんが決めたものだ。
一曲目に持ってきたのは「誰もが気付かない日の午後」。
きっとこれまでADDICTというバンドに触れてきた人たちにとっては、ここにこの曲が並べられたことの意義を何となく感じたのではないだろうか。
漂うような音色とともに浮かび上がる空間。
ポツリポツリと言葉を紡ぎながら落とす視線に、死にゆこうとする感情のピークを越えた冷静さのようなもの感じ、サビの繰り返されるギターフレーズが相反する制御の効かない心の乱れを象徴しているかのよう。
一見静かに聴こえる曲ほど熱い、シゲさんと志門さんの指の運びからもそれがよくわかる。

今回スタジオライヴということで、通常のライヴよりもじっくりと各メンバーの手元や動き・表情などを見ることができる。
特に、健一さんがギターを弾きながら歌っている前半を観ていて感じたこと。
それは、曲の持つ意志のようなものが“目に宿っている”ということ。
俳優としての顔を持ち合わせている健一さんならではの成せる表現なのかもしれない。
また、カメラが切り取った枠の中におけるオイルアートの役割も実に大きい。
いつもライヴ会場では背景のスクリーンに映し出されているイメージだが、今回はそれぞれの楽器が発する音と声、佇まい、そのすべてと混ぜ合わせて空間の中に放ち、曲ごとに充満するADDICTの世界観を画面のこちら側に送り出している。
それらがいちばんわかりやすく印象的だったのが「偽り感じて」。
穏やかで真っすぐな眼差しに、一音一音大切に奏でるメロディに、このバンドの持つ優しさみたいなものを感じられるとともに、背後だけでなくメンバー自信にもアートが投影され、黄色の水しぶきのような模様がとても鮮やかで、カメラワークも含めこの配信の中で個人的におすすめしたい曲だ。

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また、モノクロの世界から始まり、曲が静→動に変わるタイミングで色が加わるといった「推察の最中で」の視覚的な表現も、ADDICTの映像という作品に対するアート性を感じられるポイントではないだろうか。
そして後半は、5月にリリースされたアルバム『PARADIGM SHIFT』からの3曲を披露。
ギターを下ろしヴォーカルに専念している時の健一さんは、よりエモーショナルに表情や全身で感情を表現している。
《絡み合う指先が》でマイクスタンドに指を滑らせる仕草にドキッとしてしまう「ぬくもり求め」、Motmさんが要望に応えて叩いた“変なドラム”に、これベースの音!?と確認して改めて稀有な曲だと再認識した「幸せな日々」、歌い終えたあと祈りを込めるようにマイクを握り締め、遠くを見つめた姿が印象的だった「何も知らない」。
そしてラストナンバーは「幻影」。
実は、セットリスト上では別の曲名が書かれていた。
そもそものセトリが当日に決まる上に、さらに急遽のチェンジにも何の問題もなくその場が進んでいく、ADDICTメンバーのその対応力はさすがである。
怪しい音の重なりにTripし、志門さんのギター奏法に目を奪われている間に曲が終わり、約65分間のスタジオライヴは終了していた。

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収録後、メンバーに初めてのスタジオでの配信ライヴについて、感想を聞いてみました。

Motm「気持ち的にはあまり変わらないですよ。そりゃもちろん、お客さんの前の方が盛り上がるかもしれないけど、これはこれで別物で楽しかった」
志門さん「ちょっと違ういい世界だったのかなと思うし、ADDICTらしい世界は表現できたと思ってます。で、それが配信ってかたちでどう伝わるかは楽しみです」
シゲさん「お客さんがいるライヴではないけど、音に思いを込めるという意味では違いはないね。いかにちゃんと思いが込もった演奏ができたかどうか、っていうところでは結構できたと思うから良かったかな」
健一「なんかライヴって感覚よりはバンドで集まって音を出した、みたいな感じ?特にいま男闘呼組をやってたりとかさ、ロックオンがあったりとかしてたからか、余計にサウンドや曲調の違いっていうかね、やっぱり出す音とか出す人とか楽曲の違いによって、頭の中の景色が全然違うものが生まれてくるよね。このADDICTの世界…これはやっぱり必要なものだなみたいな。あとはSTUDIO ADDICTの音の環境がすごく良いので、そういう快楽的なとこはいっぱいありましたね」

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このスタジオライヴには、その名の通り『After Talk』が別で収録されている。
アルバム収録曲の話や秘話・今後の活動についてなど、メンバートークが実に和やかに行われ、その空気感が伝わる映像になっている。

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試みの数だけ新しい魅力や発見があり、そして人にはそれぞれ生きていくために自分にとって必要な要素というものがある。
この配信から感じ取ったものを持って、次は生音を浴びにもう一歩踏み出してみてほしい。
そこには誰かにとって必要な何かがあるかもしれない。

***** SET LIST *****

1. 誰もが気付かない日の午後
2. 孤独に自由に
3. 無題
4. 偽り感じて
5. 推察の最中で
6. ぬくもり求め
7. 幸せな日々
8. 何も知らない
9. 幻影

K子。/音楽ライター
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。

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