【LIVE REPORT】 2023.02.22 ファンクラブ会員限定イベント『clubTripS vol.2』

 2024.2.22 thu. 
BANK30 
Text.K子。

 昨年年末、第2回目となるFC「AddicTripS」の会員限定イベント『clubTripS』開催が発表された。日付は2月22日、健一さんが1か月に渡り出演する舞台の、期間中わずか3日しかない休演日のうちの1日だ。しかも3公演!? 一体いつリハーサルや準備をするのだろうか…そんな心配をよそに、いや、むしろさらに謎が深まるレベルに構築されたステージがそこには待っていた。

数日前までの春のような陽気から一転、真冬に逆戻りした小雨の降る中、都心のウォーターフロント・竹芝にあるクラブラウンジBANK30には続々と参加するAddicTripperの姿が。ラグジュアリーかつスタイリッシュな空間のメインフロアには、後方のソファー席だけでなく前方にも、弧を描くようなバーカウンターやテーブル席が配置され、ライヴハウスやクラブとは明らかに異なる光景が広がっている。特に1st SET、2nd SETのオールスタンディングでは、ここにどんなふうに観客が埋め尽くすのか、想像がつかない。

各SET、定刻通りにオープンすると、受付のすぐ先では志門さんが会員の皆さまをお出迎え。バンドからの感謝の気持ちを込めたプレゼントとして、特製ポーチが一人一人に手渡しされるといういきなりのサプライズに、半信半疑の人や驚きを露わにする人も。正面には、この日のために間に合わせた様々なNewグッズが並び、その先のフロアへと繋ぐ。ほのかに香るのは、開場前にお香アーティストによって焚かれていたブランド“tiyu”のオリエンタルな甘い残り香。

まだグッズを買い求める人のその後ろを、メンバーが次々と横切ってステージへ。歓声の中聴こえてきたのは、艶のあるアルペジオに導かれるような「一人にしないで」。雲が立ち込めるかのように、ベースが低く鳴り響く。両手を胸に当て、あなたの心で連れ戻して欲しいのは、この身に内包された自分自身の心なのか。その重みを振り払う、浮遊するギターに底から押し寄せるベース、そして規則正しく刻むドラムに破壊するギター。「幻影」に客席が沸く。

「皆さん、ようこそ。前寄りすぎじゃない?横でいいんだ?前はいらないんだ(笑)?」相変わらず独特なMCで、ステージから見渡す光景のファン心理を答え合わせ。そして「皆さまの出した入会金?月謝…月謝じゃないよね?年会費?」に和やかにざわつき(笑)、その会費からこの会場を借りたというお礼からの、次の曲「特別な人」へ。2nd SETではここで「そんな特別な人たちに特別な曲を」という言葉が添えられた。AddicTripSのサイト内に、昨年のクリスマス健一さんが投稿した「特別な人たち いつもありがとう」というメッセージを思い出す。

今回1st SETと2nd SETは同じセットリストとなっているが、その中でも目玉となったのは中盤に披露されたセッションver.のこの3曲。少ない音数の隙間で気だるさに誘われ、真っすぐに前を見据える強い視線に目を奪われる「今はなき世の中」。煌びやかな音色なのに心の中の不安を映し出すかのようなギター、小刻みに攻め込むシゲさんのベースにさらなる闇が立ち込める。直線的なほどタイトでドラムアレンジも印象的な「幸せな日々」。ギターとベースの小気味の良い絡みのリズムが心地よく、当時の総理大臣に向けて書いたという歌詞の輪郭が際立って入ってくる「心の中の銃」。イントロクイズをしたら正解困難なほどどれもアレンジが施されており、セッションから曲を生み出すことがナチュラルなバンドであること、また、原曲をすでによく知ってくれている人たちに向けてだからこそできる遊び心であり、そして特別な人たちに向けて何か特別なことを…そんな想いが形になったのではないだろうか。

生DJによるドリンクタイムという名の短い休憩のあと演奏されたのは「あの娘は言う」。志門さんのギラギラしたギターとシゲさんの歌うようなベースが唸る。楽器の音の艶を感じられるのもこの曲の持つ魅力のひとつだ。続く「孤独に自由に」では、重力に呼ばれるように重心を低く構え頭を振る健一さんと、気持ち良さそうに揺れる客席。目をつぶって全身を音に委ねたくなる、ADDICTらしいナンバーである。

ここまで8曲を終え、最後の曲と告げた際の客席の反応に「これって言わない方がいいのかな?黙って帰るべき?」「次の準備もあるからさ」と、らしいトークを繰り広げた後、いつも皆さんに支援いただいてるウクライナ募金への感謝を伝えるその後ろで、深々と頭を下げるMotomさんの姿が。この日も多くの支援が寄せられ、メンバーの想いと世界平和を願うすべての人たちの祈りがひとつになっていた。

そして、その最後の曲は「無題」。場内に歓声が響き渡り、躍動する人々。志門さんが所々で口ずさんでいたところも目に留まったが、何気にこの日3公演すべてを通して個人的にいちばん印象的だったのは、4人が顔を見合わせ笑い合ってこの曲に入った2nd SETでのシーンでした。

「さっきバイバイしたのに。本当にやるつもりじゃなかった」とアンコールの声に応えて登場。セットリスト上にアンコールの記載は本当にない。次回、6月22日大阪・7月7日東京でのライヴが発表され、本当に最後の一曲が届けられた。選ばれた曲は「偽り感じて」。柔らかい水色と優しい音色に包まれ、1st SET・2nd SETは終了した。

19:00、セッティングされたテーブルに、店員に案内され次々と着席する人たち。3rd SETは70名限定のディナー&ライヴ、演奏が始まる前の1時間が大方食事の時間に当たる。ふと、気付くと健一さんがワインを手にフロアに…!ボトル購入者へサインを入れて手渡しするという、予定にはないファンサービスを発動!すでに2公演を終え3公演目の直前、自身の休憩時間を削っての行動に頭が下がる思いだ。そんなこともあってか、友達と参加した人だけでなく1人で参加した人も、まるで初めから一緒に連れ立って来たかのように食事と会話を楽しんでいる。

実は気付いていない人も多かったようだが、1st SETから通して、至って普通にメンバーは同じ空間に出没していた。ある時はフロアのカウンターでお酒を飲み、ある時は同じ動線で受付前を通って外へ、ある時はグッズ売り場で商品を物色し、中には喫煙所でメンバーに囲まれ中川家状態になった人もいたほど(笑)。その様があまりに自然すぎて気付かないのだ。そう、最初から最後まで油断できないのがclubTripS!そこには、昨年FC発足時のインタビューで語っていた“境界線”を好まない健一さんらしさが体現されている。

20:00、ステージ上に健一さんと志門さんが登場し、ADDICT初となるアコースティックギター2本での演奏がスタート。客席にはシゲさんとMotomさんの姿も。「ようこそ、clubTripSへ」という第一声で始まった3rd SETの1曲目は「あの娘は言う」。ややブルージーな志門さんのギターと、落ち着いたトーンで丁寧に歌い上げる健一さん。切なげな指の運びが、しっとりと会場内に響きわたる。またひとつ、知らないADDICTに出会った瞬間である。

歌い終えたところで、一品ずつ本日のメニューを読み上げるという何ともシュールな流れに(笑)。なにやら、食事の最後に“和”がくるのを好む健一さんから、ADDICTをイメージして料理長が考えてくれたメニューなのだとか。

そして、力強く二人揃って刻む音が実に気持ちのよい「心の中の銃」。オリジナルとも、1st・2ndで披露されたバージョンとも全く違う、3rd SETのためのアレンジだ。続く「偽り感じて」では、一音一音呟くように紡ぎ出すギターとより優しさを帯びた歌声に、会場が安らぎと幸福感で満ちてゆく。

「AddicTripS、今回2ND SEASONで入った人は誰?去年は興味なかったんだ?」「これ、ディナーショーってやつなのかな?本来は…やりたくない(笑)」そんなことを言いながらも、こういう機会を設けてくれて良かったと感謝の意を言葉にすると、「輝ける亡者」へ。真っ赤に染まるその背後のスクリーンには二人の姿、共に足でリズムをとり、シンクロする右手の動き。上りつめてキメのフィニッシュ!ステージの上に2つの笑みがこぼれる。そして、アコギパート最後の曲はささやくように歌い始めた「この場所から」。壊れてしまった歯車で奪われかけている夢へと、想いを馳せているかのようで、その声にまるで雪解けのように癒えてゆく何かを感じた。きっと春は遠くない、そう信じたい。

休憩を挟み、シゲさん、志門さん、Motomさんがひとりずつステージに姿を現し、音を重ねていく。そこに、ジャケットを脱いでベスト姿になった健一さんが戻って来て体を揺らす。後半のバンドパートは「一人にしないで」から。正直、ここからの3曲はヤバかった。アコースティックからの反動なのか、いつも以上に両手で歌詞の中の感情を表現する健一さん。何度も目を閉じ、懇願するような眼差し。フランイングVを抱きしめ、最後の指先にまで想いが宿る。

静かに胸の底でたぎる熱が行き場もなく「ぬくもり求め」で溢れ出す。この曲でも大半目をつぶり、自分の中でいっぱいに充満した悲しみを、ただただ赴くままに表現しているかのような姿に、終盤サビ前のダダダダ…!と畳みかけるドラムで涙が出そうになるのをグッと堪えた。それさえも許さないというように「幸せな日々」がこちらの内なる部分に追い打ちをかけてくる。いつもより小さめのステージの上を所狭しと歩き回り、マイクを掴んで激しく頭を振りながら、「あなただけに 裏切られることはない」と手のひらを表裏・裏表と翻してみせる。ステージを見つめながら、魂の琴線に触れられたようなこの感情の理由を探してみたが、答えはでなかった。リミックスver.の軽快なリズムに、座った状態の客席も上半身で呼応し拍手が沸き起こる。そして、1st SET・2nd SET同様に「孤独に自由に」「無題」と続き本編が終了した。

アンコールに登場すると「電車とか大丈夫?」と、この日全国から集まっている人たちの帰路を心配する健一さん。また、ADDICTのグッズは自分が使いたいものというのが基本にあるということで、歴代含めオシャレで実用性のあるラインナップに納得。そして「この場所で特別な時間を過ごしてくれた人にこの曲を捧げます」と、この日の最後に演奏されたのは「特別な人」。シゲさんの紡ぎ出す妖しいベースに導かれ、“特別な夜に 再び 巡り会う”と約束を交わす。前方席の男性から「楽しかった!」と声がかかり、笑顔でステージを降りるメンバーたち。clubTripSの一日が終わった。

1st SETから3rd SETまで、実に多くの笑顔に溢れていたこの日。ADDICTの楽曲たちは、以前健一さんも言っていたように決して明るく楽しい曲とはいえないかもしれない。それでも、彼らのライヴを体験した人たちからは“多幸感”“癒し”といったワードが聞こえてくる。それはきっと、表面的なことではない内面の奥深くで感じ取っているのだろう。そして何より、時間がない中での今回初披露となったアレンジされた曲の数々に、“特別な人”たちへのメンバーの想いを感じずにはいられない。大切に思われていると感じること、それは最大の笑顔の種になっているはずだ。魔法のカードの出番はしばしお休み、次のtripは夏の大阪・東京で!


***** 1st & 2nd SET◇SET LIST *****          

1. 一人にしないで(Live version)                 

2. 幻影                     

3. 特別な人                

4. 今はなき世の中(セッションversion)                 

5. 幸せな日々(セッションversion)                 

6. 心の中の銃(セッションversion)                  

7. あの娘は言う

8. 孤独に自由に                

9. 無題

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EN.偽り感じて


***** 3rd SET◇SET LIST *****          

1. あの娘は言う(アコースティックversion)                 

2. 心の中の銃(アコースティックversion)                     

3. 偽り感じて(アコースティックversion)                

4. 輝ける亡者(アコースティックversion)                 

5. この場所から(アコースティックversion)                

6. 一人にしないで(Live version)                  

7. ぬくもり求め

8. 幸せな日々(リミックスversion)                

9. 孤独に自由に

10.無題

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EN.特別な人

◆Photographer : Keisuke Nagoshi

K子。/音楽ライター

神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。

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