【LIVE REPORT】 『2024 ADDICT OF THE TRIP MINDS Live -summer-【DAY】編』代官山UNIT◆2024.7.7 

ADDICT OF THE TRIP MINDS Live -summer-【DAY】編
2024.7.7 sun.
代官山UNIT
Text.K子。

6/22の大阪に続き、ADDICTの『Live-summer-』と銘打った東京公演が代官山UNITで行われた。“7/7=七夕”ということで、普段よりどこかワクワクするようなシチュエーション。そんな誰にとっても共通するものとは別に、きっといつのどんなライヴにも、その会場に集うそれぞれの特別な状況や想いというものが存在することもあるのだろう。当日が記念日であったり、会場が思い出の場所だとか、やっと初めて生で観れるライヴだという人もいるかもしれない。それは観る側だけでなくバンド側にとっても言えること。会場付近で生まれ育ち、実家のスタジオで初めてADDICTメンバーで音を出したMotomさんにとっても、いつか思い描いたこのハコで、このバンドで、何より愛する息子とともにステージに立つ。そんな、特別以外の何物でもない一日がそこにはあった。

渋谷からもほど近く、大人のオシャレな街として人気の代官山。駅からものの2分という好立地のビルの地下に会場はある。天井が高く開放的で、通常のスピーカー以外に上から下がるように左右にも2つ、計4か所から広い空間を音で満たしてくれる。

この日は【DAY】【NIGHT】の2公演。15:10を過ぎた頃、健一さんと志門さんの二人だけが登場して【DAY】パートがスタート。まさかのアコースティック始まりである。淡く落ちる月明りの中、二人の紡ぐ柔らかな優しさが響く「偽り感じて」。2月のFC限定イベント『ClubTripS』3rd SETでも披露されていた、おそらくADDICTの楽曲でいちばんアコースティックで聴いてみたいナンバーなのではないだろうか。逆にある意味意外だったのが「何も知らない」。憤る思いをしっとりと聴かせるってどんな感じなんだろう。「それなのに泣いてる」の「それなのに…」ですでに健一さんの表情は泣いているようで、「君といたくて」と何度も繰り返すその顔もまた悲しさで滲んでいた。この曲の“怒り”が“悲しみ”に姿を変え、切なる願いと交錯する。ただ、それを優しさが包み込んでいる、そんなアレンジにも聴こえた。

暗転からのシゲさん・Motomさんがスタンバイ、暗闇の中サイドからオレンジ色のスポットに健一さんの顔だけが照らされ、始まったのは「この場所から」。アコースティックと同じ囁くような歌い出しから、サビで一気にバンドサウンドと真昼の世界に変わる。静と動、暗と明、ダブルの効果が織り成す世界。高らかに放つギターソロで、後光に包まれた志門さんのシルエットもまた印象的で、前回の大阪にも増して秀逸だったこの日のライティングの中でも、個人的に一番美しさにグッときたのがこの曲だった。続く「特別な人」は大阪で初披露されたNew ver.。前回は水の中で揺らいでいるような青の世界だったが、今回は隠しておきたい心の裏までも映し出すようなモノクロの世界。健一さんのフライングVのミラーが客席を照らす。

そして、ドラムの軽快なリズムとともに背後の幕が左右に開き、オイルアートが出現!一気に空間がサイケでアートなADDICTの世界に変わる。会場には一斉に拳の波、「幸せな日々」だ。ブロンドの髪を振り乱しながらジャンプジャンプ!「あぁーーーーーー!!!」と目が外せなくなる程の激しく高ぶる感情に客席からは大歓声が!

ここでメンバー紹介をはさみ、「ADDICTのチルドレンです」と紹介されたMotomさんの息子Rioくんが大阪に続き登場!深みのある艶やかなギターが、ジャジーなナンバー「推察の最中で」に映える。頭を引き寄せ絡む健一さんに嬉しそうに笑顔を見せるRioくん。志門さんが指差し、熱く交わされる二人のギターバトルに客席はすっかり釘付けである。「Rio、17歳」と再度紹介すると、ハイタッチからの抱き寄せる姿に観客からも大きな拍手が送られた。

そして、足元から入り込んでくるような深く低いベースの音色が、心地のよい気だるさに支配される「孤独に自由に」。右、左、両手で羽ばたいて空を飛び、クロスさせた両腕で感じ合いながら我を抱きしめる。そんな雰囲気たっぷりの演奏をした後でも「ちょっと休みたい」「大丈夫、キツくない?一歩下がってみて」と、実に自然体で平和な空気が流れている。それもまたADDICTライヴの“らしさ”のひとつではないだろうか。

休憩明け一曲目は「一人にしないで」。昨年秋に、FC限定のインスタライヴで配信しながらアレンジを行ったこのバージョンも、すっかり馴染んできた感がある。暗く重く、内面と向き合い、震えるような声で離れないで欲しい…、連れ戻して欲しい…と目をつぶり、闇の中で扉を探す。「ぬくもり求め」もまた、自分を見つめ他人を見つめ、どうしたらよいかわからない想いを心の中でパンパンにして、「抱きしめたこの体が」とマイクスタンドに指をすべらす。やるせない想いは一体どこで救われるのか…。その空気を切り裂いたのは、浮遊するギターにタ・タ・タッ、タ・タ・タッ、と刻むドラム、それに合わせて眩しくフラッシュするライト。そこに聴き慣れたベースの音が重なる…「幻影」だ!前回の大阪で初めて披露され、いちばん大きくアレンジが効いていたのがこの曲。歌い始めたのを聴いて踊り出す人たち。幕が開き、背後には大きく揺らめくメンバーの姿が。どの曲も大いに盛り上がった印象のこの日だったが、【DAY】パートの曲終わりで一番歓喜の声が大きかったのはこの「幻影」だったように思う。

チューニング中に「カッコいいよー!」という声援がかかり、一瞬照れながらもそれに答える健一さん。「それはね、表面でしか見てないですよ。本当のオレの本心を知ったら、とてもじゃないけど酷いもんだよ(笑)」えっと…とりあえず表面がカッコいいのは認めた、ってことでよいでしょうか(笑)?ステージの上下でしばし和やかなやりとりが続き、30年以上前に当事者の想いを想像して生まれた曲、と紹介して歌い始めたのが「誰もが気づかない日の午後」。が、冒頭で曲をストップ。「違うな…なんかそういう気分になれない(苦笑)」とまさかのセットリストチェンジ!その自由さもすごいが、何がすごいって、曲を変更すること、それが「旋律」であること、健一さんが相談しに行ったのは志門さんのところだけだということだ。いくらギターから入る曲だとはいえ、これはさすがにADDICTだから成せる関係性と経験の賜物に他ならないだろう。改めて、恐るべしバンドである。さぁ、ここからラストスパート!「輝ける亡者」の乱れまくりうねりまくるベースラインに、ワウワウと泣くギター。「今はなき世の中」の小気味よく刻むリズムとスーパータイトなMotomさんのドラムに、楽しそうに客席の体が揺れまくる。

本編を終了して「アンコール、アンコール、とかやらなくていいから。ちゃんと出て来るから」という言葉を残しステージを後にすること数分。戻って来るなり「こういうのやめろって言ったじゃん、急かされてるみたい(笑)」そう言いながらもちゃんとお礼と、それから次回のライヴが12月に予定しているということ、グッズでお酒を作ってみたいと思っていること、そして「外は異常な暑さなので…」と最後は来場者を気遣い、ラストナンバー「無題」へ。志門さんが跳ねながら、嬉しそうに客席を見渡していた姿も印象的だったが、気付いた人はいただろうか、この曲で健一さんが使っていたギターは、以前FCの方では紹介したことがある、美しい木目とネックのドクロが目を引く《Gibson Les Paul VOODOO》。元々、息子の圭人さんが購入したギターで、ライヴで使用されるのは珍しい。そんなちょっと貴重な演奏を観れたところで【DAY】パートは終了した。

◆Photographer : Keisuke Nagoshi

***** DAY◇SET LIST *****          
1. 偽り感じて(Aco ver.)                 
2. 何も知らない(Aco ver.)                     
3. この場所から                
4. 特別な人(New ver.)                 
5. 幸せな日々                
6. 推察の最中で(with Rio)                  
7. 孤独に自由に
8. 一人にしないで(New ver.)                
9. ぬくもり求め                
10.幻影(New ver.)                 
11.旋律(New ver.)
12.輝ける亡者
13.今はなき世の中
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EN.1 無題


K子。/音楽ライター
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。

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