【LIVE REPORT】 2023.12.03 心斎橋club JOEL / Live -Winter-
2023 ADDICT OF THE TRIP MINDS Live -winter-
2023.12.3 sun.
心斎橋club JOULE
Text.K子。
活動再開から早2年。2023年は、男闘呼組のツアーやRockon Social Club、舞台といった健一さんの多忙なスケジュールにもかかわらず、2月に発足したFC“AddicTripS”の会員限定イベントに始まり、前年よりもアクティヴな活動を展開したADDICT。
2月 AddicTripS限定『ClubTripS』南青山BAROOM
4月 『Live 2023 -Spring-』SHIBUYA PLEASURE PLEASURE(昼夜2公演)
5月 アルバム『PARADIGM SHIFT』リリース
8月 『PEACEFUL PARK』河口湖ステラシアター
10月 『STUDIO LIVE 06.25.2023 at studio ADDICT』配信
12月 『2023 ADDICT OF THE TRIP MINDS Live -winter-』渋谷eggman(昼夜2公演)、大阪club JOULE
その締めくくりとなるライヴが、1年3ヵ月ぶりとなる大阪の地で開催された。若者の街・心斎橋の“アメリカ村”に位置する“club JOULE”は、2フロア分の開放的な吹き抜けにミラーボールを携え、ステージ頭上に設置された大型モニターがクラブならではの空間を造り出している。先日の渋谷eggman同様、ステージはすぐそこ。スピーカー前では、空気の振動で伝わる音を実感できるほどだ。音源や映像では決して感じることのできない“生”がここにはある。
14時15分、拍手に迎えられながら志門さんがひとりで登場。ゆったりとした昼下がりにも似た音色がハコの中に流れ込み、やがて一人また一人とメンバーがステージに姿を現し、ドラムが徐々に激しさを増す。オープニングは「幻影」、チル状態からの縦ノリに会場も体を揺らし、空間に反射して重低音が響き渡る。まさに眠りから呼び起こされるような覚醒の一曲目だ。続く、ベースが乱れ狂う「心の中の銃」を聴きながら、2022年クラブチッタで健一さんが感情のままに語り上げたリーディングでの言葉を思い出す。そう、引き金は弾かない、心の中だけで銃を磨く、変わらずにこれからも。
前回の渋谷からNew ver.が披露されているうちの一曲「幸せな日々」が始まると、ドラムのリズムに合わせて手拍子が起き、ステージの上も下も軽快にダンス。かと思えば、次の瞬間には一転して力強い歌声とともに拳を振り上げ、間奏では激しく何度もジャンプ!叩きつけるように腕を振り下ろし、そしてまた軽快にダンス!感情の起伏が激しいこの曲からのエモーショナルなギターリフ、という「ぬくもり求め」への展開は、より胸の内なる部分に訴えかけてくるよう。目の前にいる人たちに語り掛けるように手をかざし、《絡み合う指先が ぬくもりを求めてる》と差し出した両手の指を絡める健一さん。本当のぬくもりはどこにあるのか…悩ましさが空気を伝う。アルバム『PARADIGM SHIFT』の発売から半年、この2曲を観ていてふと、アルバムの中の曲がファンの人たちの中で育ってきているのを感じた。込められた想いは、着実に届いているに違いない。
演奏中に健一さんが志門さんの肩に手を回していた姿が印象的だった「推察の最中で」が終わったところで、「大阪の皆さんこんにちは。日曜日、昼間、師走、年末、暑い…中川家」なんとも独特なMCだ(笑)。この2日前にラジオの生放送で共演したばかりの、笑いの熱も冷めやらぬホットなネタに客席が沸く。その後、一旦休憩に入る際も「7曲もやりました。空気の入れ替えをしたいと思います」と、やっぱり独特(笑)。そんな話術(?)もきっとADDICTライヴのいいアクセントになっているはず。
後半は、先日FCのインスタライヴ配信でアレンジ過程を公開した「一人にしないで(New ver.)」からスタート。白いシャツからノースリーブ姿に変わった健一さんが、シゲさんと向い合い気持ちよさそうにその音色に合わせてゆらゆらユラユラ。熱く語りかけるようなギターソロも印象に残る。スローなナンバーでは聴き入っているという様子の人たちも多く、特に「誰もが気付かない日の午後」ではふつふつと胸の中にたぎり込める“死”への道のりに、小さく頷くように、真剣な眼差しでステージをジッと見つめる姿があちらこちらに。その視線の先に何を思うのか。
そこからの反動のようなやさしい空気をまとった「偽り感じて」、地を這うベースにMotmさんの突き上げるようなタイトなドラムが響く「孤独に自由に」、そして「あの娘は言う」「輝ける亡者」、このブロックでは少し爽やかささえ感じる黄色の水玉からサイケ極まりない色味や流れのオイルアートが、モニター大画面でその威力を発揮!【ADDICT×オイルアート×club JOULE】というタッグは、バンドの世界観・アート性を表現するには最強なんじゃないだろうか。
メンバー紹介をはさみ、ブルンブルンとはち切れんばかりのシゲさんのベースが高揚感を誘う「私と自分」へ。タンバリンで軽快に刻みながらドラムに合わせて膝でリズムをとる健一さん。ブロンドの髪が激しく揺れ動く。このclubがその昔別の場所にあった頃(1999年OPEN、2009年移転)、大阪に来ると訪れて大暴れしていたという若かりし頃の思い出話も飛び出し、ライヴができるスペースに生まれ変わったこの場所でまたやりたいという流れからの、本編最後の曲は「この場所から」。背後からのライトが徐々に明るく眩しくなっていく光景に、このバンドの願う希望があふれているようで、演奏後「ありがとう!」と繰り返す健一さんが印象的だった。
そして、アンコールは2曲。本来予定していたのは1曲だったが、Motmさんのリクエストで追加になったという「今はなき世の中」。きらめきながら浮遊するようなギターに合わせ、モニターには水に揺らめくメンバーの姿が映し出されとても幻想的。
その余韻を切り裂くようなギターのイントロに会場中が手を挙げ、歓声を上げる。ラストナンバーは「無題」だ。この日いちばんの盛り上がりに客席からは「最高ーー!」という声が。全17曲を終え「外は寒いから、ここは熱いから、風邪ひかないように。また会いましょう」と残し、盛大な拍手に包まれてライヴは終了した。
この会場は後方にバーカウンターやソファー席があるため、休憩中や終演後にのんびり寛ぐ人やお酒を片手にライヴを眺める人の姿も見られ、そういった面からもいつもとは少し違うシチュエーションを楽しむことができたのではないだろうか。
また、終演後のSNS上で「生で観てほしいっていう意味がよくわかった」という声をいくつも発見。この日もかなり長時間に渡り、インスタライヴにてライヴの様子が配信されていた。まずはどんな感じなのか知ってもらう入口として様々なツールは大事だとは思うが、きっと思っている以上にこのバンドの“生”とのギャップは大きい。それがどういうことなのか、頭ではなく体で感じに今年こそは足を運んでみてほしい。そして終演後にはきっとポストしたくなるはず「ADDICTは生に限る!」ってね。
***** SET LIST *****
1. 幻影
2. 心の中の銃
3. 幸せな日々(New ver.)
4. ぬくもり求め
5. 推察の最中で
6. 特別な人
7. 旋律
8. 一人にしないで(New ver.)
9. 誰もが気付かない日の午後
10.偽り感じて
11.孤独に自由に
12.あの娘は言う
13.輝ける亡者
14.私と自分
15.この場所から
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EN.1 今はなき世の中
EN.2 無題
◆Photographer : Keisuke Nagoshi
K子。/音楽ライター
神奈川・湘南育ち。音楽と旅行と食べ歩きが大好物な、旅するライター。愛情込めまくりのレビューやライヴレポを得意とし、ライヴシチュエーション(ライヴハウス、ホール、アリーナクラス、野外、フェス、海外)による魅え方の違いにやけに興味を示す、体感型邦楽ロック好き。